ゆき(2014年03月号)

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百町森のある静岡市は温暖で、雪はほとんど降りません。降っても風花程度です。私自身は関東出身でもう少し寒い所におりましたので、冬の朝は子どもたちと霜柱を踏んで歩いたり、前日に水を張ったカップを外に置いて氷を作ったり、また年に数回降る雪は一大イベントでした。寒いのは得意ではありませんが、そんな季節の楽しみがある冬もいいものです。不思議と遊んでいる時は寒さも忘れちゃいます。

冬の絵本で、まず思い出すのが「かさじぞう」(瀬田貞二再話 赤羽末吉画)です。深々と雪が降る日本の雪国の情景が浮かんできます。この絵本は「スーホの白い馬」でおなじみの赤羽末吉さんの絵本デビュー作だそう。ページ全体が扇の形に縁取られているのも大きな特徴ですが、なにより雪の描き方がすばらしいです。同じ雪でも、傘が売れず帰って行く時と、その傘をじそうさまにかぶせる時の雪とでは温かみが違うのです。雪一つでおじいさんの気持ちを表している見事な絵です。昔話は同じお話で、たくさんの本がありますが、「絵をよむ」という子どもたちにこそ、優れた絵の絵本を選んであげたいですね。同じような理由で「おおきなかぶ」を描いた佐藤忠良さんの「ゆきむすめ」(内田莉莎子再話 佐藤忠良画)もお勧めです。余韻の残る少し切ない終わり方ですが、それがまた一つの魅力でもあります。

雪の写真家ベントレー」(作/J・B・マーティン)は生涯を雪の研究と写真撮影に捧げた、農夫でアマチュアカメラマンのベントレーの伝記絵本です。美しい自然美に魅せられたベントレーとそれを温かく見守り、応援する家族や友人。雪のことだけでなく、好きな事をとことんやりとげた一人の物語は、将来の夢を持ち始めた小学生の子どもたちにも何か響くものがあるのではないでしょうか。

こんな絵本を読んだり、実際に手袋や洋服についた雪の結晶を虫メガネなどでのぞいたりしたら、雪の結晶を自分で作ってみては?六角の雪の結晶は、紙を折り重ね、切ってできる紋切り遊びなら簡単にいろいろな模様を作ることができます。「紋切り型 雪之巻」は雪華文様の型紙23図と青から白のグラデーションの和紙が入っていてすぐ雪の結晶の紋切り遊びが楽しめます。できあがったものは窓や障子に貼ってお部屋を飾ったり、台紙に貼っても素敵です。

また、ゾムツールにも「ゾムツール雪の結晶キット」(廃番)があります。平面など簡単な物なら年長さんくらいからでも遊べます。ゾムツールはもともと建築模型や研究用に作られていたこともあり、幾何学模様は得意分野なのです。

「雪の結晶はなんで六角なの?」「なんで一つとして同じ形がないのだろう?」美しい形を見ているとそんな疑問がいろいろと湧いてきそうです。ベントレーではないですが、自然に触れることで、科学や数学に興味を持つきっかけになることもあるのかもしれません。そんな時、周りの大人が子どもの疑問や興味を大切にし、良い絵本、そして興味を発展できるおもちゃに出会わせてあげたいものです。微力ではありますが、私もそのお手伝いができたら、店員冥利に尽きるってものです。