子どもの遊びの中で、私が一番興味をそそられるのがままごと遊びです。はじめはみんな、お母さんの真似をして赤ちゃん人形のお世話をしたり、料理をしたりですが、話の口調や料理の仕方で家庭の様子が出るのがおもしろいところです。そして、年齢によっても変化(進化?)していくままごと遊び。子どもたちの世界が外へ広がっていくのが見てとれます。お家から、お店屋さん、レストラン、いろんな仕事へとままごとの舞台も変わっていきます。どんなお店があるのかのヒントになるのが「あいうえおみせ」(安野光雅)です。あいうえお順といろは順に様々なお店が並んでいます。大型スーパーや商業施設に行けば、なんでも買えてしまう昨今ですが、やはりお店屋さんごっこは専門店が楽しいですよね。小学生以上で歴史に興味が出てきたら、「江戸のお店屋さん」(藤川智子)もあります。現代のお店との違いもおもしろい。こんなお店もあるんだと絵本を眺めるだけでも♪
こういったごっこ遊びの広がりは実体験とつながっています。興味を持ったものは実際に見たり体験することで、より深まっていきます。
今夏の保育セミナーの相沢の分科会で紹介したY保育園の映像で新幹線ごっこをしているものがありました。その中で、運転士や車掌はもちろん、駅構内のお弁当やさん、車内販売や車内清掃の役までしていたことに本当に驚きました。私も最近、ホームで車内清掃の係りの方の手際のよい仕事っぷりに釘付けになりました。イスの向きを反対にし、背もたれの頭部のシートをはがし、新しいものに付け替えて、ごみを回収していく。それを見るまで、頭部のシートを意識した事がなかったのですが、映像の子どもはイスに洗濯ばさみで、そのシートをつけていました。すごい観察眼です。車内販売は実際に昼食を運ぶワゴンを使ったりと本物さながらに大道具、小道具を使ってごっこ遊びを楽しんでいました。この園の子どもたちがここまで遊び込めるのは、実体験や環境認識の課業をすることで、どんな仕事があるのか知っていたからなのでしょう。
私自身が年長児だった頃、クラスのみんなで将来なりたいものを言いあうということがありました。そのとき、私はなりたいものがないと悩んだことをよく覚えています。今思うとなりたいものがないというより、知っている選択肢が少なかったのかもしれません。「しごとば」(鈴木のりたけ)は職業ごとに使う道具、場所、制服や作業着などが実際には見られないような所まで事細かに画かれています。私も子どもの頃にこの絵本に出会いたかったなぁ。鈴木のりたけさんの取材力にあっぱれです。
どんな仕事があるか、また、地域や社会のことを詳しく知るという事は、あんなことやこんなこともできるんだと選択肢を与えられる、子どもたちが自分の将来に希望を持つことにもつながるんじゃないかとちょっと大きなことを思ったりしました。もちろん、子どもたちはそんなことを考えて遊んでいる訳ではないのですが、幼児教育に関わる大人の側はそんな意図を持って、時には遊びをしかけたり、提案したりすることも幼児期後半には必要になってくるではないかと私は思っています。