新連載始まります!!
毎月、テーマに関するおもちゃや絵本を紹介してきた「イーヨーの遊びのヒント帖」、今月から「園訪問記」にリニューアルします。
元保育士だった私は、今まで様々な保育を経験してきました。百町森に勤めはじめて、自分が理想とする「遊びを中心とした保育」に取り組んでいる園が多くあることを知りました。そんな素敵な園の様子をみなさんに紹介したいと思い、この訪問記をスタートさせます。
なごみこども園の環境づくり
朝の9時過ぎ、浜松のなごみこども園(以下なごみ)さんに到着しました。すると園庭の子どもたちは、ハグズ社(スウェーデン)の遊具や三輪車などでダイナミックに遊び、一方、室内の子どもたちは、ごっこ遊びや積み木、パズルなど、自分のやりたい遊びをそれぞれが見つけ、夢中で遊んでいました。そのため、室内は落ち着いていて静かな印象を受けます。
開園されて9年目、まずは園長先生に、この遊びを中心とした保育を選ばれたきっかけを伺いました。「自分は保育の勉強をせずにこの業界に入り、大人はいつも怒っていて、子どもはいつも泣いていて、不健康な状態だなぁと感じていました。心がもっと健康な状態にならないかと。そして市内で違う保育をしている園の取り組みを見て、そこで相沢さんや樋口さんを紹介してもらい、遊びとか環境、おもちゃの視点を持ち始め、それをもとになごみ保育園(現 なごみこども園)を始めました。」
(2歳児クラスのお部屋:絵本を見ている子、その奥でお医者さんごっこをする子、素材を出したり入れたりして遊ぶ子、ままごとをする子と自分のやりたい遊びを選んでいる。)
保育室には各年齢に合わせて様々な種類のおもちゃが棚に並んでいます。このようなおもちゃや環境を用意するのは園長先生が選ばれているのでしょうか?
「うちは少し変わっていて、保育士が子どもの発達を見て、こういう要素の遊び(例えば積む、つまむ等)が欲しいと言った時、とりあえずそれに関する遊び道具を全種類買ってみる。出してみて、子どもがよく遊ぶのがその子に必要な物なんです。」とのお答え。もちろん、キャラクターものではないとか、良い素材の物という大前提はあると思います。その中で保育士が子どもの遊ぶ様子からこの子には今はこのおもちゃが必要と判断しているそうです。また、園長先生は、「よく、うちの園のおもちゃは高価だと言われるけど、それは何年使えて、何人が使うかという意識がないからです。そういうものは使ってみないと良さがわからないから「高価なもの」になってしまう。専門機関で、病院なら最新の医療機器をそろえるのにお金がないとは言わないと思う。保育園はなかなか結果が目に見えないからね。」ともおっしゃられていました。
幼児期は他の子と遊んでほしい
なごみさんは、乳児期(0〜2歳児)には担当制保育をしています。毎日同じ保育士が子どもの欲求を受けとめ、丁寧な保育をしています。また、幼児期(3〜6歳児)にはより他者との関わりを大切にするために異年齢保育をされています。
「保育園の幼児の遊びってただ遊んでいればいいのではなく、『誰と何をどのようにするか』ここが大事。だから、うちの幼児の担任はロンディとかラキューをあまり出さない。他者と交わって、社会性を育んでいくために、幼児ではなるべく一人遊びにならない環境を作る。確かに、ラキューは5歳ですごいもの作るし、集中して遊ぶけど、それは家でもできる。保育園では、誰かと何かをする体験や経験を大切にしている。」とのこと。その日は幼児は園庭にいましたが、幼児保育室の写真の積み木からも子どもたちが協力して一緒に遊んでいる姿が見えてきませんか?
(幼児異年齢クラスのお部屋:発表会の「11ぴきのねこふくろのなか」に出てきたウヒアハの城だそう。みんなで相談し、協力しなければできない遊びの一つですね。)
なごみ流『生きる力』とは?
「ここの園で最も重きを置いているのは、生きる力を育むこと。生きる力とは、自立することではなく、「人のために」生きられるようになることと思っている。広い意味でいうと、 社会のため、大人になってお店をやっていればお客さん、看護師さんなら患者さんというように、他者のために生きることが心地いい、喜びを感じるというようになってほしい。 それは、 自分が社会的弱者だった時にどれだけ助けてもらったかの体験の集積で、この時期にどれだけ自分の要求を適切に満たし、受けとめられたか。自分に自信を持ち、自分で考え、主体性、コミュニケーション力を身につけ、自身が健康でなければ人のために生きられない。そういうものを丁寧な育児や遊びの中で育てていきたいと思っています。」最後になごみさんの保育の真髄を聞く事ができました。
今回の取材の内容は、さらに「遊びと保育.com」で詳しくご紹介します。また、次回はなごみこども園さんの子育て支援について伺います。お楽しみに。