2009年夏、私は静岡県浜松市、なごみ保育園の志賀口園長から、話があるから来てほしいと呼び出されました。園に行ってみるとそこには、柳町園(大阪府門真市)の大西園長、大徳保育園(石川県金沢市)の浅香副園長(当時。現在は園長)、そして浜松学院大学(当時。現在は東洋大学)の高山静子先生がいらっしゃったのです。三園長は、日本保育協会青年部「保育環境委員会」のメンバーで、神奈川の全国大会の研究発表の為の打ち合わせで集まっていたのです。そこで高山先生と私は講演(コメンテーター)を依頼され、かつ、私(百町森)は、その場で参加者に実際に遊んでもらう為のゲームを選んでほしいとの依頼もされたのです。
よくよく話を聞いてみると、発表は結構な長丁場だとの事。三部構成で、第一部では私の積み木ショーを含めたおしゃべりと高山先生の講演。第二部で参加者にゲームをやってもらう。第三部で三園長の研究発表という予定なのだそうです。その第二部のゲーム大会について、10テーブル位用意して、記憶系・瞬発系・推理系いろいろ揃えて・・・と、皆が構想を練るなか私は異論を唱えます。第一部と第三部で「遊び」全般の講義をして、まん中の第二部でゲームのみ体験するのは中途半端な気がした訳です。保育室の遊びはゲームもあれば、役割り遊び、構成遊び、手先の遊びと様々な遊びがある訳ですから、その全てを展示して自由に遊んでもらったらどうか?と提案したのです。どうせなら会場の一角に理想の保育室のシミュレーションを作っちゃうてのはどうだっ!
私の発言に真っ先に賛同したのは高山先生でした。三園長は、そうなると見本として展示したおもちゃを会終了後に園で全て買い取るには、あまりに額がかさみすぎるとの危惧が、一瞬頭によぎった様子です。
そこで私は「最後に即売会をやっちゃおう」と提案。それが良いねというか、それしかないねって事になり、大西園長に至っては「売れ残った品は柳町園で全部買い取る」とまで言って下さる始末。有難い!でもそうまで言ってくれなくても完売目指しますからと、この提案はめでたく受け入れられたのでした。さてこうなると相沢の独壇場です!保育室のシミュレーションといったら、幼児クラスだけじゃない、0歳児クラスもあれば1歳も2歳もある。いっそ保育室全て、それぞれシミュレートしちゃえ、てな事になり、話がどんどん大きくなってゆきました。幼児クラスは遊びのカテゴリー別に区分けしようとか、アイデアが大噴出!
その後、店に帰って社長の柿田氏を説得。会場はラッキーにも一番広い分科会場(480平方m)を借りる事ができ、その後ろ三分の一を使い、総額350万円ほどのおもちゃや保育家具などを、展示する運びと相成った訳です。さあこの研究発表がどうなったかと言えば、もちろん大成功!全ての分科会の中で、真っ先に申し込みが終了するほどの人気でした。参加者は120人を越え、おもちゃを実際に見て触れて遊んで大満足の様子。他の分科会の参加者も、休憩時間などに多数見学にみえるという盛況ぶりだったのです。日本保育協会の歴史に残る画期的な会になったと我ながら自負している次第です。保育室のシミュレーションだけでなく、高山先生の講義、三園長の発表も含めて最高の発表会だったのです。いやホント。
リストアップから始まり、発注、仕入れをして、その全てを車三台に詰め込み、いざ横浜へ! 何しろ総額350万円分のおもちゃです。家具類は現地で組み立てです。今思い出しても、面白かったな~。いや、スッゲー大変ではありましたよ。スタッフも私と柿田氏に加えて佐々木氏、川島さん、柿田氏の娘さんまで駆り出され、ヘトヘトになった記憶が蘇ります。私なんぞは、荷下ろしに家具の組み立て、会場脇の出店ブースで販売員と動き回ったあげく、本番ではおしゃべりもし、積み木ショーもするという目の回るような忙しさです。でも今は真っ先に面白かったなと、あの時の事を美しく思い出してしまうのです。そして何よりの収穫は、売り上げとかではなく、高山先生や熱い志をもった園長先生たちとの出会いでした。打ち上げで一杯やりながらも、保育の未来の話ばかりが飛び交う大勢の園長たち。
さてそんな「保育環境委員会」がその後どうなったか・・・です。この集まりをこのまま解散するのはあまりに惜しいと、この大会当日のうちに三重県津市の明和ゆたか保育園森本園長が親分肌で「G3保育環境研究会」として再結成する訳です。その後の大躍進は百町森保育セミナー等でご存知の方も多いと思います。
G3のスローガンは『全ての園児により良い環境を』です。あと『それぞれがそれぞれの場所で頑張る』のが掟で、つまりそれを守れば保育理念や保育方針の違いがあっても一緒に勉強していこうぜ、てな感じでしょうか。共通理解している点は、環境という側面から保育を考えるところです。メンバーは南は沖縄に至るまで全国で50人以上。私が一番素晴らしいと思う点は、この会が自主的な集まりだってところですね。保育界にこんな集団は他にないと私は思っています。G3が保育の未来を変える日は近い・・・かな?
(コプタ通信2013年09月号より、相沢康夫)
保育室 百町森の提案
この時の展示を元に作成したチラシです。消費税5%時代の税込価格ですし、この後、各問屋が値上げをしているので、価格は参考です。画像をクリックするとPDF(約10MB)が開きます。