2.遊び主体の保育

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ある保育園の改革のはなし その2

さて、私がA保育園に行くといつも驚くのは園内が静かなことです。園児が250人近くいる保育園と誰が思うでしょうか。他の園でよく見かける先生が大声出している姿がここにはありません。先生は子どもに話す用事がある時は、その子の前に行って、時にはしゃがんで話します。そのためか、子ども同士も不思議と静かに会話している気がします。

それに、室内や廊下を走り回っている子もいません。この子たちは、一人ひとり課題を持っていて(つまり遊ぶことがいっぱいあって)、大声出したり、走り回っている暇がないという感じです。絵を描いている子、ままごとをする子...、保育室にはさまざまな遊びがコーナーごとに用意されているので、全員いっしょにそういう遊びをするわけではないのですが、先生の目の届く範囲で子どもたちは皆「自由」にしているのです。でも、これもただ好き勝手にしているわけじゃない、保育士は号令や命令はかけませんが、年齢や個性にあった課題は出しているのです。もし、全員いっしょにすること(絵本を読んだり、わらべ唄や『毎日体操』をする時)がある場合、集まって来ない子には「それが終わったら来てね。」と言えばいい。しばらくすれば、その子もその子の課題を終えてやってくる。つまり、保育士も子どもをすごく信頼しているってことですね。

こういうスタイルになる前は、どういう遊びを、どんな風にしていたかというと、例えばブロックで遊ぶ時にはザーッと箱から出して、全員がそれで遊び、遊ぶ時間が終われば「お片づけ」をして...。これでは遊びは深まったり発展したりすることはないでしょう。それに、子どもたちは絶えず「先生、次何するの?」と訊いていなければなりません。先の見通しがきかず、子どもは落ち着いていられません。今は日課が毎日同じように決められているので、保育士が指示しなくても子どもは自主的に次の行動に移れます。

以前は鼓笛隊もやっていて、たった一日、運動会で勇姿を見せるだけのために、4月から練習をしていたそうですが、今は遊びが主体です。遊びの中には子どもを育てる要素が沢山あります。コミュニケーションする力や人間関係を作る力も遊んでいる中で育つし、遊びは小学校から始まる学習の基礎にもなっていますからね。

(コプタ通信2007年04月号より、柿田友広)